
今、日本は、この国と国民を守り、世界でゆるぎない存在たりうる実力を持っているのだろうか。また国民は自国の将来についてどれほど真剣に考えているのだろうか。
「この国はどこにいこうとしているのか?」―この問いが今ほど重要なときはない。この数年、世界は急激に変化しており、日本はこれまでにない大きな岐路に立たされているからである。
長期間にわたる欧州財政危機、北朝鮮の韓国砲撃、中東民主化の波とその後の混迷、
超円高の常態化、尖閣事件(中国漁船衝突事件)、TPP協定交渉参加、北朝鮮ミサイル
発射実験など、日本の内外で次々に起こる予想外の展開は、歴史の潮流が急速に変化していることを教えている。
各国で相次ぐ政権交代も偶然ではないだろう。時代の変化とともに旧い体質がもたらす閉塞感を打ち破ろうとする各国に共通した国民意識の発露がそこにはうかがえるのである。
しかし、変化のときは大混乱のときでもある。はたして今の日本にそうした時代潮流の荒波に自ら船出するだけの精神的、物理的な準備ができているだろうか。
昨年3月、私たちは東日本大震災を体験し、そこから多くの事を学んだ。
何よりも痛感したのは、日本が国家として十分に機能できたかということだった。なぜ、政府は、あの非常時に国家の総合力を発揮して問題を乗り越えるために動けなかったのか。政府として何が何でも国民を守るという心構えがそこにはあったのだろうか。
一方で、非常に感動したのは被災地の人々の立派な姿だった。それは海外の人々まで感動させた。すべてが破壊しつくされた廃墟の中で、人々は互いを思いやり助け合い辛抱強く耐え抜き、誇り高き日本人の姿を現してくれた。そこから教えられたのは、日本を支えるのにもっとも大切なことは、何よりも一人一人が立派な日本人であるということだった。
東日本大震災が教えてくれたのは、この国の行く末にとって「まともな国家」と「立派な日本人」がいかに大切かということだった。
これからますますその激しさを増すに違いない歴史の荒波と混乱を乗り越えるためには、それ相応の国民的覚悟と戦略と実行力が必要となる。
そうした「国民的覚悟」と「戦略と実行力」を私たちは「日本の志」と名付ける。「国民的覚悟」とは日本人の志であり、「戦略と実行力」とは日本国家の志である。
そして今、歴史が変わろうとしている、まさにこのときこそ、「日本の志」を真剣に問うべきだと思う。日々、国際政治について学ぶ私たち畠山ゼミ生の、それが務めだと自覚するからである。
私たちは、日本という存在の真髄を知り、日本が果たすべき役割を自覚し、日本をゆるぎない国家へと導く道筋を見出すとともに、私たち一人一人の課題を問い、自らの生き方を確立していきたいと考えている。
第13回 畠山ゼミナール主催 講演会
2012年 10日20日(土)
13:00開場
13:30開会
15:00閉会
▼企画趣旨
学習院女子大学 2号館 222教室
鈴木美勝 -時事通信社解説委員兼「外交」編集長。茨城県出身。
1975年早稲田大学政治経済学部卒、時事通信社入社、政治部配属。
ワシントン特派員、外務省、首相官邸、自民党各記者クラブのキャップを歴任後、政治部次長、ニューヨーク総局長 。著書に『いまだに続く「敗戦国外交」』(草思社)のほか、『小沢一郎は何故TVで殴られたか』(文藝春秋)など。
お問い合わせ先hatakeyama_semi@yahoo.co.jp.